取締役の会社に対する責任とは?責任を負うケース、範囲、追及方法について解説

取締役の行為により会社に損害が生じた場合、取締役は会社に対する責任を負うことがあります。

この記事では、取締役の責任について、どのような場合にどの範囲で責任を負うか、責任の追及方法は何かなど、詳しく解説していきます。

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取締役の会社に対する義務や責任とは

取締役は会社経営上で広範な職務を担いますので、会社が健全に運営されるためには取締役の職務が適切に行われることが重要になります。

会社法では、取締役の職務が適切に行われるようにするために取締役の義務を定め、会社に損害が生じた場合や会社から資産が流出した場合には取締役に責任を負わせています。

善管注意義務

取締役の主要な義務の一つとして、善管注意義務があります。

善管注意義務とは、善良な管理者の注意義務を短縮した呼称です。

善管注意義務は、取締役という地位にある者に対して一般的に期待される程度の注意を払う義務を意味しています。

取締役は、職務を遂行する際に、善良な管理者の注意をもって行わなければなりません。

忠実義務

取締役は、法令・定款・株主総会決議を遵守して、会社のために忠実に職務を行わなければなりません。

これが取締役の忠実義務と呼ばれるものです。

取締役には善管注意義務もあることから、忠実義務との関係が問題になりますが、忠実義務は善管注意義務とは別個の高度な義務を意味するものではないと一般に理解されています。

したがって、善管注意義務と忠実義務の内容は同様なものと捉えることができます。

もっとも、会社と取締役の利益の衝突が問題になる場面の義務を区別して、特に忠実義務の用語が使われることがあります。

取締役の責任

取締役が任務を怠った場合や、特別な責任について定めた会社法の規定に違反した場合は、会社に対して損害を賠償する義務、あるいは一定の支払いをする義務を負います。

取締役が任務を怠った場合の責任を、任務懈怠責任といいます。

善管注意義務や忠実義務に違反したときは、任務懈怠責任を負うことになります。

また、会社法では任務懈怠責任の他に、利益供与や剰余金の分配、現物出資などについて特別な規定を置いています。

取締役は、これらの規定に違反する行為をした場合にも一定の責任を負います。

取締役に責任が生じるケースと責任の範囲

会社法には、取締役が責任を負うケースとして、基本的・包括的な責任としての任務懈怠責任の他に、いくつかの特別な責任についての規定が置かれています。

ここでは、取締役の責任が生じるそれぞれのケースと責任の範囲について解説していきます。

任務懈怠責任

取締役は、会社に対して善管注意義務・忠実義務を負っています。

取締役がこれらの義務に違反したときは、それによって会社に生じた損害を賠償する責任を負います。

この責任を任務懈怠責任といいます。

任務懈怠による賠償の範囲は、取締役の行為(不作為も含みます)によって会社が被った損害の額です。

取締役に任務懈怠があること(注意義務違反)は、取締役の責任を追及する側が証明する必要があります。

取締役の任務懈怠が問題になるケースとしては、まず、経営判断に失敗して会社に損害が生じた場合があります。

経営判断にはリスクが伴いますが、会社を発展させて株主の利益に資するためには、取締役が過度にリスクを恐れて萎縮しないような判断枠組みが必要になります。

そこで、取締役の行為の結果として損害が生じた場合でもただちに任務懈怠があるとするのではなく、裁判所は経営判断に事後的に介入しないという原則がとられています。

具体的には、経営判断の前提とした事実について合理的な情報収集・分析・検討が行われたか、および、その事実認識に基づく意思決定の過程で不合理な判断がされていなかったかという点を中心として判断されることになります。

このような判断枠組みは、経営判断の原則と呼ばれることもあります。

2つ目に、法令違反のケースがあります。

取締役は法令を遵守して職務を行わなければなりません。

取締役が法令違反の行為をした場合には、任務懈怠の責任を負います。

3つ目に、監視・監督を怠った場合が問題になります。

取締役の職務には、他の取締役の職務の執行を監視・監督することも含まれています。

例えば、他の取締役が法令違反行為をしようとするのを認識していながら放置した場合のように、取締役が監視任務を怠れば、任務懈怠の責任を負うことがあります。

会社の業務は、取締役だけではなく他の役員や従業員が行う場合も多くあります。

そこで取締役は、従業員も含めて会社全体を監視することが必要になりますが、個々の従業員を監視することは現実には不可能であることから、一定以上の規模の会社では内部統制システムを構築するという義務を負います。

取締役がこの義務に違反した場合にも、任務懈怠責任が生じます。

競業取引

取締役が、自己または第三者のために、会社の事業の部類に属する取引をすることを競業取引といいます。

競業取引がなされると会社に損害が生じる危険性が高いことから、会社法上で規制されています。

取締役が競業取引を行おうとするときは、事前に重要な事実を開示して取締役会(取締役会非設置会社では株主総会)の承認を受けなければなりません。

また、競業取引をした取締役は、事後に遅滞なく重要な事実を取締役会に報告する必要があります。

取締役会非設置会社では、事後の報告義務はありません。

競業取引によって会社に損害が生じた場合には、任務懈怠のある取締役は損害賠償責任を負います。

会社から競業の承認を得た場合であっても、任務懈怠があれば損害賠償責任は生じます。

取締役が承認を得ずに競業取引をしたときは、その取引によって取締役または第三者が得た利益の額が、会社に生じた損害の額と推定されます。

利益相反取引

利益相反取引とは、会社と取締役の利害が相反する取引を意味します。

利益相反取引には、直接取引と間接取引の二つの類型があります。

直接取引とは、取締役が自己所有の不動産を会社に売却する場合のように、取締役が自己または第三者のために会社と取引をすることを指します。

間接取引は、会社が取締役の債権者との間で取締役の債務を保証する場合など、取締役以外の者との間で取引が行われる場合です。

利益相反取引は、会社を犠牲にすることで取締役が自己または第三者の利益を図る危険性があることから規制されています。

利益相反取引の場合にも、重要な事実を開示した上で、事前に取締役会(取締役会非設置会社では株主総会)の承認を受ける必要があります。

また、取締役会設置会社では、事後に重要な事実を取締役会に報告する義務もあります。

利益相反取引が行われた場合で会社に損害が生じたときは、任務懈怠のある取締役は損害賠償の責任を負います。

利益相反取引によって損害が生じた場合には、以下の取締役に任務懈怠が推定されます。

  1. 直接取引を行った取締役または間接取引で会社と利益が相反する取締役
  2. 会社が利益相反取引をすることを決定した取締役
  3. 利益相反取引について取締役会の承認決議に賛成した取締役

取締役は、自己の責めに帰すべき事由がないことを証明できれば責任を免れることができ、責任の一部免除の対象にもなっています。

しかし、自己のために直接取引をした取締役は、任務懈怠につき無過失責任を負いますので責任を免れず、責任の一部免除も認められません。

利益供与

会社は、株主の権利の行使に関して、誰に対してであっても財産上の利益を供与することを禁止されています。

この規制に違反して利益供与がされた場合、利益供与に関与した取締役は、供与した利益額に相当する額を会社に対して支払う義務を負います。

利益供与をした取締役には、無過失責任があります。

その他の利益供与に関与した取締役は、注意を怠らなかったことを証明すれば支払義務を免れることができます。

なお、総株主の同意がある場合には、取締役の支払義務を免除することができます。

分配可能額を超過した剰余金の配当等

剰余金の配当の他、原則として自己株式を取得するためには、効力発生日における分配可能額の範囲内で行う必要があります。

分配可能額を超過した剰余金の配当等が行われた場合は、その行為に関する職務を行った業務執行取締役などの業務執行者は、剰余金の配当等によって交付された金銭等の帳簿価額に相当する額を会社に支払う義務を負います。

剰余金の配当等の行為が株主総会または取締役会の決議に基づいて行われた場合は、議案を提案した取締役や、剰余金の配当等に関する事項の説明をした取締役、取締役会決議に賛成した取締役等にも同じ支払義務があります。

取締役が支払義務を免れるためには、その職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明する必要があります。

取締役の責任は、総株主の同意がある場合には分配可能額を限度として免除することができますが、それを超える部分を免除することはできません。

余金の配当等により欠損を生じた場合

分配可能額の範囲内で剰余金の配当や自己株式の取得を行った場合であっても、その事業年度末において分配可能額に欠損が生じる場合があります。

この欠損とは、分配可能額がマイナスとなることを意味します。

剰余金の配当等による欠損が生じた場合には、業務執行取締役等の業務執行者は、株主に対して交付した金銭等の帳簿価額の総額と欠損額(分配可能額のマイナス額)の、いずれか少ない方を会社に対して支払う義務を負います。

業務執行者は、その職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明した場合でなければ、この義務を免れません。

総株主の同意がある場合には、業務執行者の支払義務を免除することができます。

なお、定時株主総会で決定した剰余金の配当については、業務執行者の責任が生じません。

自己株式の取得については、単元未満株式の取得等の一部の例外を除いて、原則として責任が生じます。

出資の履行が不適法な場合

募集株式の発行や新株予約権の行使の際には、現物出資が行われることがあります。

この現物出資財産の価額が所定の価額に著しく不足している場合には、その職務を行った業務執行取締役や、現物出資財産の価額の決定について株主総会または取締役会の決議があった場合の議案提案取締役等は、会社に対して不足額を支払う義務を負います。

取締役は、現物出資財産について検査役の調査がされた場合や、注意を怠らなかったことを証明したときには、不足額の支払義務を免れます。

募集株式の発行時等には出資の履行が仮装される場合もあり、この場合にも取締役の責任が定められています。

募集株式の引受人等が出資の履行を仮装した場合は、仮装に関与した取締役には、仮装した払込金額の全額を支払う義務が生じます。

仮装に関与した取締役は、出資の履行を仮装した取締役を除いて、注意を怠らなかったことを証明したときは責任を免れます。

出資の履行を仮装した取締役は、無過失責任を負いますので責任を免れません。

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取締役の責任が免除される場合

会社法では、一定の要件のもとに取締役の責任の全部または一部が免除される場合が定められています。

ここでは、取締役の責任の免除について概説します。

総株主の同意

取締役の責任は、総株主の同意がある場合には原則として全部を免除することができます。

ただし、分配可能額を超過して剰余金の配当等を行った場合は、会社債権者を保護する趣旨から総株主の同意があっても責任の全部は免除されず、分配可能額の範囲が免除の限度になります。

責任の一部免除

取締役の任務懈怠責任については、取締役が善意かつ無重過失の場合は、損害賠償額から法定の最低責任限度額を控除した額を限度として、一部を免除することができます。

責任を一部免除するための手続きには、以下の3つの類型があります。

  1. 株主総会の特別決議
  2. 定款の定めに基づく取締役・取締役会の決定
  3. 非業務執行取締役の責任限定契約

なお、利益相反取引の直接取引の相手方となる取締役は、上記のどの類型によっても責任を一部免除することができません。

株主総会の特別決議による一部免除

株主総会の特別決議により、取締役が善意かつ無重過失の場合には、任務懈怠責任を一部免除することができます。

監査役設置会社の場合は、株主総会に責任免除に関する議案を提出する際に、取締役は各監査役の同意を得る必要があります。

定款の定めに基づく取締役・取締役会の決定による一部免除

一定の要件を満たす会社では、定款の定めに基づく取締役会の決定により取締役の任務懈怠責任を一部免除することができます。

取締役会非設置会社では、取締役の過半数の同意で責任の一部免除を行います。

要件は、以下のとおりです。

  1. 取締役が二人以上存在し、監査役設置会社であること
  2. 取締役が職務を行うにつき、善意かつ無重過失であること
  3. 定款に、取締役または取締役会の決定により責任の免除ができる旨の定めを置くこと

監査役設置会社では、定款変更により責任免除の定めを設ける旨の議案を取締役が株主総会に提出する際に、各監査役の同意が必要になります。

取締役会に定款の定めに基づく責任免除に関する議案を提出する場合、または取締役の同意を得る場合にも、監査役の同意を得なければなりません。

なお、総株主の議決権の100分の3以上(定款により引き下げることができます)を有する株主が異議を述べたときは、定款の定めに基づく責任の一部免除をすることができません。

責任限定契約による一部免除

業務執行取締役以外の取締役(非業務執行取締役)については、定款に定めがある場合には、会社と非業務執行取締役が責任を限定する契約を締結することができます。

責任限定契約により責任を免除されるためには、取締役は善意かつ無重過失であることが必要になります。

責任限定契約を締結した場合は、定款で定められた額の範囲内において会社が定めた額と、最低責任限度額のいずれか高い方の額を限度として、非業務執行取締役が賠償責任を負います。

責任限定契約を締結した非業務執行取締役が、以後にその会社の業務執行取締役等に就任した場合は、責任限定契約は将来に向かい効力を失います。

監査役設置会社では、定款を変更して責任限定契約の定めを設ける旨の議案を取締役が株主総会に提出する際には、各監査役の同意が必要になります。

賠償責任保険(D&O保険)

賠償責任保険(D&O保険)とは、取締役が損害賠償請求をされたことで被った損害に対して保険金の支払がされるものをいいます。

賠償責任保険は取締役の責任の免除とは異なりますが、取締役の損害賠償リスクを軽減する方策として広く利用されています。

取締役の責任の追及方法

取締役の責任の追及は本来ならば会社が行うのが原則です。

しかし、会社が責任追及を怠るおそれがあることから、会社法では取締役の責任の追及方法として、株主が訴訟を提起することも認めています。

会社が取締役の責任を追及する場合

会社が取締役に対して責任を追及する訴えを提起する場合には、以下の者が会社を代表します。

  1. 監査役設置会社では、監査役
  2. 監査役設置会社でない会社では、株主総会により定めた者
  3. 監査役設置会社でない会社で、株主総会により定めた者がいない場合は、取締役会により定めた者
  4. 監査役設置会社でない会社で、株主総会・取締役会により定めた者がいない場合は、代表取締役

株主が取締役の責任を追及する場合(株主代表訴訟)

株主代表訴訟を提起できるのは、公開会社では6ヶ月前(定款で短縮できます)から引き続き株式を保有する株主です。

非公開会社では保有期間の制限はありません。

持株数に制限はありませんので、株主であれば代表訴訟を提起することが可能です。

株主は、まず、取締役の責任追及の訴えを提起するように、会社に対して請求しなければなりません。

会社が提訴請求を受けてから60日以内に訴えを提起しないときは、提訴請求をした株主が自ら代表訴訟を提起することができます。

なお、会社に回復できない損害が生じるおそれがある場合には、ただちに代表訴訟を提起することができます。

株主代表訴訟の訴額は、財産上の請求でない請求に係る訴えとみなされますので、提訴の手数料は請求額に関係なく一律に1万3,000円となります。

会社は株主代表訴訟に補助参加をすることができます。

会社が取締役側に補助参加をするためには、監査役全員の同意が必要になります。

株主代表訴訟の判決の効力は、勝訴・敗訴にかかわらず、会社に及びます。

勝訴した場合には、損害賠償は会社に対して支払われることになります。

株主側が勝訴(一部勝訴も含みます)した場合は、必要費用と弁護士報酬につき、相当と認められる額の支払を会社に請求することができます。

株主側が敗訴した場合であっても、株主に悪意があった場合を除いて、会社に対する損害賠償責任は負いません。

株主代表訴訟でも和解をすることができますが、和解をするために総株主の同意は不要です。

なお、会社が和解の当事者でない場合は、会社による和解の承認が必要になります。

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取締役の第三者に対する責任

取締役が職務を行うについて悪意・重過失があった場合は、それによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負います。

取締役の第三者に対する責任には、間接損害と直接損害の場合があります。

間接損害とは、取締役の任務懈怠によってまず会社が損害を被り、その結果として第三者も損害を被る場合をいいます。

直接損害とは、取締役の任務懈怠により、第三者が直接的に損害を被る場合を指します。

取締役は、任務懈怠行為と第三者の損害の間に相当因果関係がある限りにおいて、間接損害と直接損害の両方について責任を負います。

責任を負う取締役の範囲については、業務を執行した取締役の他に、名目的な取締役であっても、他の取締役の業務執行を監視しなかったとして責任を問われる可能性があります。

事実上会社の業務を執行しているに過ぎず、正式には取締役として選任されていない者についても、事実上の取締役として第三者に対する責任を負うことがあります。

その他、取締役が以下の行為をしたときは、注意を怠らなかったことを証明しない限り、その行為によって第三者に生じた損害を賠償する責任を負います。

  1. 株式、新株予約権、社債、新株予約権付社債を引き受ける者の募集をする際に通知しなければならない重要な事項について虚偽の通知をした場合、または、募集のための説明に用いた資料に虚偽の記載・記録をした場合
  2. 計算書類・事業報告、これらの附属明細書・臨時計算書類に記載・記録すべき重要な事項について、虚偽の記載・記録をした場合
  3. 虚偽の登記をした場合
  4. 虚偽の公告(貸借対照表の内容を電磁的方法で公示する場合も含みます)をした場合

取締役の責任が争われた裁判例

取締役の責任が裁判で争われた例を紹介します。

福岡地裁平成8年1月30日判決

この事件では、水産物の卸販売業をする会社の代表取締役が、取締役会の承認を得ず、資金運用審議会にもかけずに、内規で定められた株式投資の運用限度額を大きく超える資金を用いて危険性の高い株式投資を行い、会社に多額の損害を与えました。

取締役側は、いわゆる経営判断の原則により責任を負わないことを主張しましたが、裁判所は、このような行為は取締役の善管注意義務・忠実義務に違反することが明白であるとして、経営判断の原則が適用される場合にはあたらないとしています。

結果として、取締役側の責任が肯定され、多額の損害賠償が認められました。

東京地裁平成16年9月28日判決

取締役の責任が否定された例もあります。

この事件では、ある百貨店が海外出店を計画し、出店用地の買収をするために現地の会社に2度にわたり総額3,000万米ドルの買収資金を貸し付けました。

しかし、土地の買収は進まず出店もできなかったうえ、債権の回収も行わなかったので、最終的に貸付金のうちで会社が回収できたのは500万円に過ぎませんでした。

その後会社が民事再生手続きを受け、再生裁判所が損害賠償債務を査定したことについて、取締役側が異議の訴えを提起しました。

裁判所は、取締役の行為時における会社の状況や会社を取り巻く情勢のもとにおいて、会社が属する業界の通常の経営者が有すべき知見と経験を基準として、経営判断の前提となる事実の認識に不注意な誤りがなかったか、その事実に基づく行為の決定に不合理がなかったかという観点から、その行為が著しく不合理と評価されるか否かにより、取締役の任務懈怠を判断するとして経営判断の原則を用いています。

最終的にこの事件では取締役側の行為を著しく不合理とは判断せず、その責任を否定しました。

大阪地裁平成15年10月23日判決

取締役が第三者に対する責任を問われた裁判例もあります。

この事件は、ソフトウェアの講習を行っていたコンピュータスクール会社が違法に複製を行ったため、ソフトウェアの著作権者から損害賠償を求められたものです。

裁判所は、代表取締役の責任について、代表取締役である被告は、その職務上、自己または会社従業員がプログラムの違法複製を行わないように注意すべき義務があったにもかかわらず、注意を怠って自ら違法複製を行ったかまたは従業員が違法複製を行うのを漫然と放置していたとして、少なくとも重過失があったことは明らかであると判断しています。

結論として、会社と代表取締役の双方に損害賠償責任を認めました。

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まとめ

この記事では、取締役には様々な責任があることを解説してきました。

取締役の責任が問題になる場合には、争われる金額も大きく、訴訟に発展することも少なくありません。

取締役の責任については、専門の弁護士に相談して適切な対策をとることをおすすめします。